CMディレクター「中島信也」× 嶋村吉洋

CMディレクターの中島信也さんに、インタビューをさせていただきました。

中島信也さんは、日清食品カップヌードルCMの「hungry?」シリーズでカンヌ国際CMフェステバルでグランプリを受賞し、その後もサントリー『燃焼系アミノ式』『伊右衛門』など数々のヒットCMを手掛けていらっしゃる、まさに広告界の巨匠でいらっしゃいます。

 

今回は、時代のながれや流行りの変化を捉えながら人々の印象に残る数々のCMを生み出し続けている中島信也さんに、経営者として現場がどれだけ大事な場所であるかや、人々を喜ばせる仕事の価値観についてお聞きしました。

 

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中島信也氏/東北新社専務取締役 CMディレクター

本日はありがとうございました。まず、ご講演いただいた感想をお願いします。

中島氏)参加された方々のエネルギーがすごく高かったです。声を上げて笑ってくれてましたね。僕のほうが、皆さんのパワーを存分に浴びさせてもらったというのが、正直なところです。

森林浴、半身浴などと同じようなイメージで、人間浴を本当に浴びました。ネガティブなエネルギーの人間浴を浴びると沈んでしまいますが、会場の皆さんは360度ポジティブに溢れていました。

 

すごいですよ、びっくりしました。本当に素敵な時間を過ごさせていただき感謝です。あっという間でした。

インタビュアー)普段の生活から感性が豊かでいらっしゃるのでしょうか?

中島氏)そうですね……。誰よりも早く、雨が降ってくる気配がわかりますね(一同爆笑)

 

やはり、天地の動きには敏感なところがあるのかなと思います。私たちは自然の中で生かされています。人間も含めて自然環境なので、周りの環境と調和するように生きていきたい。森や、空、水、人などは全部同じで、できるだけ気持ちを開いて感じるように心がけています。

感性を豊かにすることが、中島さんがこだわっている”喜んでもらえる仕事”に繋がっていますか?

中島氏)最終的には、みんなで笑顔になりたいねってことですからね。

大勢の人がいる中でひとりだけ沈んでいる人がいたら気になってしまいます。スタジオでも、各方面を明るい気持ちで進めていきたいです。仕事が終わった時に、今日もいい仕事したなと思っていたいです。

 

タレントさんは仕事が早いのです。それを察知して、早く進めるように心がけています。早く終わるとタレントさんがとても喜ぶし、後に声をかけていただけることもあります。タレントさんから「中島さんだったら安心です」と指名されることもあります。

現場には色々なものが渦巻いています。それらを整えてひとつの作品を完成させるために、みんなの気持ちをポジティブに、明るくしようと意識しています。単に出演者のことを「監督」するのではなく、現場全体を作っていくことが監督の役割だと思っています。

「明るく、仲良く、気持ちよく」これができればいいなと。

もちろん仕事なので、大変だったり、苦しかったり、しんどかったりすることは必ずあります。ですが、しんどい仕事こそ、「明るく・仲良く・気持ちよく」ができるかを考えていますね。

仕事に対する現役度について聞かせてください。

中島氏)すべて現役度の問題なのかなと思っています。

現場から離れてしまうと、若者と目線を合わせるのが億劫になったり、アドバイスができなくなったりします。質問に答えられたとしても、具体的ではなく曖昧な内容になってしまいます。

 

現場をやっているからこそ、若い人たちといつでもコミュニケーションをとっていける。会社を動かしていくためには、若い方とコミュニケーションできなくなったらダメだと思います。このような話を嶋村さんとしているときに、「なるほどそうか!」と気づかされました。

これから会社に入って、創る人たちとコミュニケーションを取れるかが重要です。自分が現場にいる理由は、趣味ではなく会社のためにも大事なことだからです。若者たちに一番開かれた役員になっていればいいのかなと思いました。

現役で現場に居続けることは、楽しいです。

広告業界も伸びゆく業界ではないですが、魅力は広がっては来ていると感じます。これまでは、コミュニケーションを創る仕事は4大メディアとされてきましたが、現代ではそれ以外にも広がりを見せています。映像でのコミュニケーションは極めていけるし、テクノロジーが開発されているので、おもしろく魅力ある仕事でありつづけます。

 

これまでのようにテレビコマーシャルが儲かる時代ではなくなってきました。だけど、ますます面白くなって、仕事の幅は広がっていきます。その魅力を僕らが意識していないと若者が入ってきませんからね。こういった内容は、学生さんにもお話しています。

人々の記憶にながく残るCMヒット作のアイデアはどのようにして生まれたのでしょうか。

中島氏)基本的には僕が0から100まで企画していることはないです。プランニングのチームが知恵を出しあい、そこにクライアントさんが乗っかって初めて企画が実現します。

僕はいいチームに恵まれているのです。普通では思いつかない発想をする天才プランナーや、天才的な絵作りをするアートディレクター、今をときめく売れっ子CMプランナーとも出会っています。僕がそういった方々の受け皿となり、相手とかけ算できるようにお付き合いさせていただいています。とてもありがたいですね。スーパークリエイターと呼ばれている人たちと出会えるのは、企画を考えられた方の期待以上のものを創っていこうという気持ちから来ていると思います。

 

また、作品づくりは、自分ひとりの努力だけではなく、本当に色々なことが影響してきます。例えば、天気や現場の雰囲気などもそうです。現場の雰囲気が滞ってたら、絶対にいい作品はできません。流れが滞っていると、どうやってもダメなものはダメなのです。

作品づくりは、大きな流れの中で行われます。目に見えない流れのようなものを意識しているのと同時に、目に見えない流れには一人では刃向かえない。どんなスーパーディレクターでも流れが来てなければ、できないんですよね。

 

インタビュアー)流れを掴むことこそ、現場感も関係しているのでしょうか?

中島氏)現場感や現役度ですね。私たちはその中を流れて生きています。動いているからこそ現役で、陸に上がってしまうと現役引退かなと思います。

会社も同じで、川は流れていても、上から見ていたり、遠くから見ていると人ごとになってしまいます。大きな動きがある中で、流れにどぶんと浸かっている必要があります。

 

日本の企業において苦しいところがいっぱいあるのは、川から上がったおじさんがうごめいているからじゃないでしょうか。一緒に流れようよと努力をしていると良いのですけれどね。どこかで上がりと決めることなく、いつまでも一緒にやっていくことを決めることが大事だと思います。

 

これが、会社としてエネルギーを絶やさないことに繋がるのではと感じます。

これまでたくさんの天才と呼ばれる方々とお仕事をされてきた中で、特に印象的だった人は誰ですか。

僕にとって印象的だった人は2人います。東京藝術大学の教授をやられている佐藤雅彦さん。そして、多摩美術大学の教授をやられている大貫卓也さんです。

佐藤雅彦さんは天才クリエイターで、広告にとどまらず、今でも若手と一緒に色々なプロジェクトで活躍されています。彼は右脳のチカラがすごいのです。彼の手がけたCMは『ポリンキー』やNECの『バザールでござーる』など。『ピタゴラスイッチ』の監修もされています。奥様方や女性、子どもなど、右脳が柔らかい人に響いて、いつの間にか入り込んで、みんなの記憶に残る作品が多いです。

仕事の進め方で印象的だったエピソードがあります。何も映っていないテレビのモニターを置き、「この状態から何が出てきたらいいか、3分で考えましょう」と企画を進めるのです。そして3分後にはしっかりと生み出すのです。本当に天才です。

 

2人目の大貫卓也さんは、カップヌードルの『hungry?』を創られた方です。去年は、『Advertising is』という作品集を出されました。この人は一言で言うと、努力の天才です。作品集を見ると、「これ程やらなければいけないのなら、広告の世界には入らない」と憂鬱になるくらいの努力の内容です。

佐藤さんは電通、大貫さんは博報堂さんを出られて、どちらも年代は僕と同じくらいすね。僕はディレクターとして、このふたりと仕事をしました。スーパークリエイターはこの人たちのことを言うのだなと、生涯忘れない方々です。

新しい才能も出てきていますが、昭和平成にかけたら、このおふたりです。 

中島さんの座右の銘を教えてください。

中島氏)「明るく・仲良く・気持ちよく!」これは絶対に大事だなと思います。意識しているだけでなく、できているかどうかが大事です。

3つとも絶対に同時に揃うものだと思っています。「どないしよう」と、なかなか上手くいかないことは今でも多いです。ただ、それはまだ伸びしろがあると解釈しています。

 

この年になってからも、色々な問題があるんだなと。広告業界で35年やってきても、世の中がどんどん変わり、驚くようなことがあります。でも、まだ驚くことができる自分でいるのがいい。

今後チャレンジしたいことはありますか。

CMにとどまらず、色々なクリエイティブをやっていますが、あえてコマーシャルという秒数が決まった映像の演出を極めていきたいと思っています。

動画広告は色々出されています。ウェブ媒体では長いCMも創れますが、長いCMは見ないようになってくる。今は15秒でも長いと言われ、「6秒CM」も出てきてますね。6秒にかけるのは面白いと感じます。

日本は『hungry?』以降、賞が取れていません。それは(外国のCMは長いことから)「CMが長くないからだー」って言う人もいますけれど、日本人は長いCMが好きではない。若者向けにはどんどん短くなっています。短い中でも、どれくらいすごいものが創れるか、と言うCMの世界が楽しみです。

これからも、頼まれごとは全部やってみるつもりです。会社としては、新しく入ってくる若者たちにとって「楽しい、面白い、成長できる」会社に変えていきます。

高度経済成長期を一緒に歩んできた古い会社なので、意識を変えようとしています。今日の会場の皆さんのように、若い社員がハッピーになって一緒に盛り上がれる会社を目指したいです。

それと同時に、広告コミュニケーションも変わっていきます。昔は「CM業界面白いぞ」って言ってたましたが、本質はコミュニケーションを創っていく仕事です。この世界に、今日の会場の皆さんのような元気な若者が入っていくようになったら良いなと思っています。

僕のこのキャラクターとしては、率先してこの業界自体を熱くしていきたいですね。

最後に、これからチャレンジしていく今日の会場の若者たちに一言お願いします!

今日来てくださった皆さん。僕は本当に、パワーを頂戴しました。パワーを僕にくれるということは、ちゃんと体の中に潜んでいるということです。出てないものがいっぱいあると思いますが、信じて自分の中の木を大切に育ててください。

感謝しかありません。

インタビュアー一同)今日はありがとうございました。